| ドメスティックバイオレンス(DV)の夫・恋人は変わるのか?! |
私たちカウンセララーはDVで相談に凝られる女性から「夫(恋人)は変わらないんでしょうか?」と必ずと言っていいほどよく尋ねられます。また、平成11年にウィメンズカウンセリング京都が(財)京都市女性協会の委託を受けて実施した『女性への暴力に関する市民意識調査』(以下DV調査)の結果をみても、「夫が変わってくれるのではと期待する」と答えた方が25%おられました。このように、「暴力をふるう夫・恋人がかわるかどうか」ということが、被害者がDVの現状を考え、どう解決するかを決断する際の大きなポイントになっていることがわかります。そこで、今回このテーマを取り上げることになったのですが、当日は満員で関心の高さがうかがえました。
まずウィメンズカウンセリング京都の小松明子から、DV調査に基づいて報告がありました。そのなかでおよそ20%(10人に2人)の女性がなんらかの暴力を受けていて、その過半数が2つ以上の形態の暴力をふるわれた経験があるという結果が出ています。また、「暴力を受けたと思ったことはない」を選択しながら、同時にDVの形態を示す項目をも選択した「無自覚的DV経験者」が、全体の10%(10人に1人)を占めていることも明らかになっています。この点について報告書は、「受けている暴力を過小評価したりすることで、精神的なバランスを保とうとしているのではないか」と分析していますが、社会的にも被害者の方が責められる傾向にあったり、加害者から「殴られるのはおまえが悪いからだ」と責任転嫁されることも、「自分をDVの被害者である」と思えない原因の一つではないかと小松からの指摘がありました。続いて小松は、フェミニストカウンセラーから見た加害者男性を「ジェンダー規範が強く支配的で、自分の暴力を正当化あるいは過小評価していて」「力で支配できるDVの状況は加害者にとって好都合」であると分析し、そのため、暴力をふるう男性が暴力の責任を引き受け、自分を加害者化できなければ絶対に「変わることはない」と結びました。
続く発題者の一人であるメンズサポートルームの中村正さんは、その「加害者化」を目標に、「男の非暴力プログラム」を実践されています。参加する男性の多くは「頭では暴力はだめだ」と考えているということです。6週間のプログラムは、「DV加害者として自分を認知」し、感情を伝えるスキル」の獲得、暴力に依存しない行動を学習するなどで構成されています。また、加害者の男性が自分の加害性を認めて離婚に臨むことや、子どもへの虐待防止などもサポートしているのだそうです。
弁護士の中村多美子さんによれば、被害女性の代理人として司法手続きおいて接する男性は、「女は殴られるもの」「妻がちゃんと対応しないからだ」「他人に何がわかる」など、自分を加害者と思っていないことが多く、暴力の認識さえもなく、なぜ妻が逃げるのかもわからないとのことです。司法手続きによって夫が反省して変わるのではと期待している被害者の女性も多いが、加害意識のない男性を見ていると「その期待は無駄」と感じると話されました。加害者意識もなく、暴力に依存している男性と戦っておられる様子が臨場感を持って伝わり、心強く感じました。
今回の公開講座において、「自分を加害者化できない男性は絶対に変わらない」ということが確認できたと思います。「暴力の責任を引き受け、加害者としての自分に向きあえるかどうかは、加害者自身の問題」。この当然のことがこれまで見過ごされ、女性が何とかしなければならない問題とされてきました。親密な男−女関係において、社会は女性に過剰な責任を負わせてきたのです。暴力をふるわれていい人などいません。「DVは女性に対する人権侵害であり、犯罪である」。この当たり前のことが社会全体に共有されなければ、DVの根絶は実現しないと思います。 |
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