| フェミニストカウンセリングと部落差別・民族差別 |
今回の公開講座は、「なら解放新聞」編集長の福岡ともみさん、「女のよろず(ヨロガジ)相談電話」スタッフの皇甫(ファンボ)康子(・カンヂャ)さんをゲストに迎え、WCKスタッフの森本葉が加わり、3人のシンポジストと36名の参加者が、部落差別・民族差別とフェミニズムを考えました。シンポジストの話はそれぞれの思いにあふれたパワフルなものでした。そのほんの一部を報告します。
福岡さんは、「部落差別という怖いものにでくわす運命に自分はいるのだな」と思い続けてきて、20代に解放運動に出会い、「部落だと名乗ってもいいんだ」と思えた体験を語りました。その後、部落の歴史の見直しをするなかで、行政責任を問う運動のありかたが、部落の本当の姿を歪めてきたこと、そのために自分たち自身が、「自分に対する否定的イメージ、いきいきしていない自己イメージをもたされている」と気づきます。また、「個々人や女性の感性を後ろに押しやる」運動のありかたに疑問を抱くようにもなります。多様な人たちを「部落民」ということでひとくくりにし、組織への批判は「敵を利するもの」としてはねつける。個人の葛藤や傷つきには目を向けない運動って何なのか、煮詰まっていた福岡さんが、北京会議、沖縄の少女強姦事件をきっかけにフェミニズムとつながり、新しい視点で自分や周囲の人たちとの関係を見直していったことを、ときに笑いも交えて話してくれました。
WCKの森本も、部落解放サークルの仲間だったAさんへの差別文書事件に支援者としてかかわった大学時代の経験を語りました。彼女の話からは、個人に向けられた攻撃が、ただちに集団に対する攻撃とされ、「真相を究明し、加害者に謝罪させ、解決されるべき問題」として取り扱われていく構造がよく分かりました。そして、Aさんの問題を自分たちの問題として取り組んだけれど、Aさんとのギャップがひろがり、教授や運動団体からは責められ、辞めたくても辞められないまま孤立していった森本たち支援者は自分たちの苦しみを言葉にできないまま、「傷ついたわたし」を抱え込んでいきました。ほんとにしんどかったやろなと思います。その後、性暴力被害者サポートの視点を得て、「支える人もしんどいと言っていいんだと発見した」と彼女は語りました。
皇甫さんは、冒頭でCAPプログラムの理念である「安全」「自信」「自由」の3つの権利を紹介し、それらの権利を生まれながらに奪われている在日朝鮮人の状況に対して、多くの日本人が無知であり、鈍感であると指摘。日本人が当たり前のように行使している市民的権利がないこと、「しくみから排除されている」なかで日々暮らすということがどういうことなのか、「『個人的な問題は政治的な問題』と被害者化できない」在日女性の状況を、「あなたたちは分かろうとしているのか、見ようともしていないのではないか」という問いかけました。差別者であり、特権的な地位にいる自分を意識することもなく、自分の被差別の側面だけに目を向けた日本人女性から、「『同じ女として在日の女性差別を語って』と言われて話す気にはなれない」とも。そうだよな。私にそれが見えてなくて、つながれなかった女性たちを思い起こしました。
また、皇甫さんは、森本の話を受けて、「関わることでしんどくなる自分」へのメンタルヘルスの必要性も語りました。「わたしも、いつも代弁者になって言わないと、仲間を支えないといけないと思い続けてきた。すべての問題を抱えて引っ張っていく。100%受け止めていくというこの気持ち自体が間違っている」「ひとりの女性が元気になることが解放運動」とも語りました。
福岡さんは、「フェミニストカウンセリングはオープンかつ安心の場であって欲しい。どんな生き方をしてきてようが、違いを認識しつつ『痛み』に共感するって感じかな」というメッセージをよせてくれました。3人が提起した問題はフェミニズム運動にも内在する課題です。 |
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