| ワークシェアリングを学ぼう―新しい働き方の可能性を探る |
9月29日、ウィングス京都で、WCK公開講座「ワークシェアリングを学ぼう!〜新しい働き方の可能性を探る〜」を開催した。シンポジストは女性労働研究の第一人者である大沢真知子さん(日本女子大学教授)とWCKの井上摩耶子である。
シンポジウムは大沢さんの、今、何が起きているのかという話から始まった。世界的に見れば、転職が少なく、平均勤続年数が大変長いという日本の男性の働き方は珍しく、逆に日本女性の平均勤続年数は意外と長いほうで、その背景としては、男性のこの働き方が労使とも有利になる税制度等があり、転職を妨げる仕組みがあるからだと言う。これまではこの雇用慣行が一定有効であったが、現在、この慣行の経済合理性が薄まり、企業がこれを維持するコストの削減を求め、非正社員への依存を強め、正社員の新規採用の抑制をしているという変化が起きている。
次に、ヨーロッパと日本で違うパート労働の定義について説明があった。ヨーロッパでは雇用契約で無期(期間の定めのないもの。常用雇用)・有期(臨時雇用)の違いがあり、労働時間でフルタイム・パートタイムの違いがあり、無期でパートタイムという組み合わせもありえる。一方で、日本では正社員がフルタイムの常用雇用で拘束的な働き方で高収入、それ以外が非正社員で低収入となっている。正社員の割合はどんどん減って典型雇用ではなくなっていくので、正社員と非正社員の分け方そのものを変え、均等処遇を考えていかざるをえないと指摘する。多様な働き方の保障、つまりどの働き方を選んでもソンをしないようなしくみにすることが、21世紀の労働のあり方として望まれるとする。今後、どんなワークシェアリングが日本に適しているか、業績給の方向性と年功給の守り方にどう折り合いをつけるかが労使の焦点になるだろうが、まずは誰もが働き方を選択できることが重要と話された。
井上からは、ワークシェアリングの実現による社会のイメージが語られた。それは性別役割分業システムの完全崩壊であり、ユング派のいうところの「男性性」「女性性」(ジェンダーにすぎないのだが)の消滅、女性の他者優先・他者コントロールからの解放であり、あらゆる領域での男性中心主義への反逆というイメージである。もっと現実的に描けば、ワークシェアリングをして働くことにより、女ひとりでも「食える」ようになるので、「永久就職」としての結婚がなくなり、たとえば夫・恋人がドメスティック・バイオレンス(DV)の加害者と分かれば、すぐにその男性と別れられる。さらに重要なことは、労働時間が短くなるので、子育てがしやすくなるということである。
ワークシェアリングが実現すれば、井上が描くイメージのように、女性が生きやすい社会の実現が可能になるのかもしれない。一方、大沢さんも、「女性の悪い労働状況はこれ以上、悪くはならず、良くなるしかない。そこに経済合理性があり、その方法しか、社会は良くならない。私たちは今、転機となるおもしろい時代を生きていると思う」と表現した。日本的雇用慣行の特徴と言われてきた終身雇用・年功型賃金制度にすでに大きな変化が起きており、従来とは違う発想への転換が求められている。大沢さんの著書「新しい家族のための経済学」で印象深いのは、「経済学の視点からみると、日本の貴重な人間資本の半分が中途半端にしか活用されず、それが経済発展を遅らせているということになる。とくに賃金が世界一高くなり、人間資本が世界一稀少になってきた社会において、この浪費は大きい」という指摘である。性別役割分業システムが崩壊する社会にするために、また経済発展のために人的資源を生かして働ける社会にするためにも、仕事と生活の調和を考えた新しい働き方としてのワークシェアリングがキーワードになることは間違いないようだ。 |
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