報告文〜2006年9月10日
DV・面接交渉権の基礎知識〜「子どものため」って何だろう?
 9月10日、WCKの公開講座「DV・面接交渉権の基礎知識〜『子どものため』って何だろう?」が行われた。DV被害者が子どもを連れて家を出た場合に、子どもの父親である加害者が、子どもと会うことを要求してくることはよくある。しかし、それは加害者との接触が継続するという側面を持ち、被害の継続を意味することも多い。公開講座は面接交渉権についての現状を知り、「被害者と子どもの安全」を考える場になった。

 まず初めに、大阪家庭裁判所堺支部調査官の柏原さんから、家庭裁判所についてお話しがあった。他の裁判所と家庭裁判所が大きく異なるのは、家庭裁判所は法律的対応のみではなく、福祉的関わりを行うという点にある。それゆえに、人間関係の専門家として調査官が必要とされる。面接交渉に関しては、「子どもの健全な成長には、親子の継続的な関係が大切」と考えられるそうだ。つまり、面接交渉をすること自体が子どもにプラスになるという前提がある。したがって、面接交渉の審理では、面接交渉をする/しないではなく、面接交渉の条件を話し合うことが多いそうだ。ちなみに、面接交渉が子どもにマイナスとされるのは、養育をしている親が再婚し、子どもが再婚相手と養子縁組をしたり、子どもが親に会うことを拒否していたり、親が子どもに暴力を振るっている場合になるらしい。調査官は、例えば、子どもが親に会うのを拒否している場合に、子どもに会い、信頼関係を作りながら、過去の思い出などを聞き、総合的に子どもの気持ちを判断し、審理の資料を提供するそうだ。

 中川弁護士からは、「代理人から見たDVと面接交渉」について話していただいた。面接交渉権は、法文上に規定があるわけではなく、審判で認められた権利なので、若干あいまいな点があるということだ。代理人の立場からみると、家庭裁判所は「面接交渉絶対善」だが、本当に面接交渉が絶対善なのだろうかという問題提起があった。DVでは、被害者の安全を守るために非接触が重要と考えられるが、面接交渉を行うことは、接触することになり、安全性の問題がある。また、加害者が子どもから居場所等を聞き出すことも考えられる。そして、加害者が子どもを利用し更なる暴力を振るう可能性もある。被害者の生命・身体の安全よりも面接交渉が重いわけがないのだから、そのことへの理解が大切だということだ。また、親の自己満足的な面接は、子どもにダメージを与えるので、面接交渉の正しい理解を親に教育することも重要だと話された。そして、面接交渉のルール作りや監督・介入のシステム作りやフォロー体制などの整備が必要だと話された。

 最後にWCKの小松から、多くの被害者は、安全なら父親を子どもに会わせたいと感じているにも関わらず、「安全」についての配慮が少ない審理の問題について話があった。加害者は、公的な場での適切な振舞いに長けていることが多く、また第三者に対しては適切に行動できること、経済的に優位な立場にあること、養育者としての母親と父親に対する社会的期待が違うことなどが、加害者の主張が受け入れられやすい背景にあるのではないかという指摘があった。そして「被害者―加害者」の視点がない審理の場が、DV被害の拡大という人権侵害の場にならないように、家庭裁判所は、専門的な丁寧な聞き取り調査や、安全な面接交渉や危機管理システム、フォローアップシステムを整えて欲しいと話した。

 なにより優先されるべき「安全」が、きちんと優先されるように、DVについて被害者と共に声を上げ続け、単純に「面接交渉絶対善」とするやり方を覆していく道を歩んでいきたいと改めて思った公開講座だった。