報告文〜1998年5月10日
「女性が働くことと」とストレス
 5月公開講座『女性が働くこととストレス』は3人とシンポジストを招いて、盛りだくさんの内容になった。21世紀職業財団元短時間雇用管理アドバイザー井爪久美子さんから、働く女性がどういうことでストレスを感じるかについて、様々な統計資料をもとに話してもらった。打ち合わせの段階では、ウィングス京都での労働相談の経験から、最近相談にこられる方は、雇用者からの不当な扱いに対して何らかの形で抗議していくようになってきたという印象を話して下さったが、当日はプライバシーの問題もあり、労働相談の具体的な内容について詳しく聞けなかったのが残念だった。

 イラストレーターのあかさかひろこさんは、女性が雇用労働だけでなく、フリーランスや企業家など多様な働き方を選んでいく状況について説明した後、自分の働いてきた経験から感じてきたことを話して下さった。あかさかさんは、“働く女性の力になりたい”と保母になったが、労働条件や人間関係の悪さなどから退職。職業訓練校で勉強した後、フリーのイラストレーターになった。あかさかさんが強調していたのは、人とつきあわなくてもいいからフリーになりたいという人もいるが、実際は仕事の上で交渉をするなど逆にフリーの方がシビアだということだ。仕事の交渉の際には、自分の仕事を評価して、いくらなら仕事を引き受けられると相手に料金を提示していかなくてはならない。それが最初はとても難しかったそうだ。「その料金は低すぎるから受けられない」と断るのは、ものすごく勇気がいり、何日も悩んだと言う。けれど、いざ主張してみると、相手も低い料金で申し訳なく思ってくれていたり、こちらから提示した方がやりやすいと思っていたり、ということがわかったということだ。そして、そんな経験を積み重ねる中で、だんだんと自然に主張することができるようになってきたそうだ。フェミニストカウンセリングでも、女性にとって「自分の能力を自分で評価して、自己主張していくこと」は大きなテーマである。あかさかさんが試行錯誤しながらそれを自分のものにしてきた話は、どんな仕事についている人にとっても参考になったと思う。

 最後に、鍼灸師の栗原陸さんは、ストレスの身体化症状について、東洋医学の考え方からていねいに説明して下さった。日常生活において、病気とまではいかなくても、ストレスがたまって身体に様々な症状が出る場合は多い。栗原さんは、東洋医学の養生法として「身体の声を聞く」ということを話された。肩が凝る、胃が痛い、頭痛がする、眠れない、など身体に症状が出たら、「自分は疲れているのかな、何かしんどいのかな」と考えてみる。それに気がついて、じゃあ休もうとか、自分をケアしてあげようとか、しんどいことを言葉や行動で表現していく。「身体の声を聞く」ことは、とても大切なことだと思った。
 なるほどなと思ったのは、後半の質疑応答で、職場のストレスから病気になってしまった友人のことを相談された参加者に対して、「病気になることを必ずしも悪いことととらえていない」と話されたことだ。それまでなかなかしんどいと言えなかった人が、病気という形でしんどさを表現できたのだから、それをこれからケアして、無理をしないで生活していくことができるようになればいいと肯定的にとらえるということだ。

 また、興味深かったのは、ストレスにどう対処するかで抵抗力が違ってくるという話で、「怒り」などの攻撃反応では免疫反応(抵抗力)は低下しないが、「恐れ」などの退却反応では低下すると言われている、ということだった。フェミニストカウンセリングでも女性が「怒り」の感情を持ってそれを適切に表現することを肯定的にとらえているが、やはり「怒った」方が身体にもいいんだ、と心強い思いがした。

 それぞれのシンポジストの話からいろいろなものが得られた講座だった。