| 性暴力と裁判―あなたが訴えるとしたら― |
性暴力の被害を訴える人が増えている。ウィメンズカウンセリング京都(以下WCK)でも、何らかの性暴力の相談が昨年の相談の約2割を占めています。性暴力の被害に対しては、心理的なサポートだけではなく、社会的にも「あなたは悪くない。暴力は100%加害者に責任がある」と認められることは、被害を受けた人が回復していく大きな助けになります。裁判はそのための方法の一つです。
シンポジウムはまずWCKスタッフの周藤由美子が裁判支援の経験から、主に強姦、強制わいせつ、セクシュアルハラスメントに関わる法システム、裁判の実態について、〈刑事裁判と民事裁判〉〈裁判の限界〉〈訴えるにあたってのハードル〉〈訴えることを考えるために〉というテーマで話しました。次にWCK代表の井上摩耶子が専門家として裁判での意見書提出や証言を行っている経験から、〈被害者の心理状態、被害者がとる対処行動についての専門家証言〉〈レイプ関連PTSD(心的外傷後ストレス障害)に関する専門家証言〉〈「強制」か「合意」かの解釈における問題点〉〈性暴力裁判手続きを変える〉〈フェミニストカウンセラーの役割〉をテーマに発言しました。ここではその中のほんの一部、特に私たちにとってなじみのない刑事裁判の手続きの入り口であり、被害を受けたときにまず訪れる警察で起こること、そのときに知っておいたらいいこと、できることについて紹介します。
刑事裁判とは、加害者に対して国家が刑法に基づく処罰をするものです。ここでまず知っておく必要があるのは、被害を受けて被害届を出すだけでは警察は捜査、逮捕、起訴に動かないということです。親告罪といって告訴をすることではじめて警察が動くので、告訴が受理されているかの確認が必要です(ただし強姦罪の輪姦や強姦・強制わいせつ致傷罪の場合は告訴の必要はありません)。警察の取り調べでは、被害状況について同じことを何度も微に入り細に入り聞かれ、「自分は疑われているのか、これじゃあ犯人扱いじゃないか」と多くの被害者が苦痛を感じます。これは警察側にとっては、被害者の言うことに信用性があるかを確認し冤罪を未然に防ぐために必要で、ある程度はやむを得ないことのようです。ただし、この時に被害とは直接関係のない自分の私生活、たとえば異性関係などについての質問に答える必要はありません。自分の納得いかない質問に関しては説明を求めていくことは私たちの権利です。作成された調書も自分が話した通りに書かれているかを必ず確認することも大切です。
また、司法警察官といって取り調べ調書を作成する資格をもつ女性警察官はまだ少ないので、司法警察官が男性の場合は被害について話すことは被害者にとっては大変です。このようなときには、女性警察官や弁護士、あるいは友人の立ち会いを求めていいのです。外で待っていてもらうだけでもずいぶん力になるでしょう。警察では実況見分(現場検証)も行われます。この場合も女性警察官や弁護士、友人の立ち会いを求めることができます。このときに被害状況の再現を求められることが多いと思いますが、これも被害を受けた人にとって非常につらいことですから、自分がやるのではなく人形や警察官にやってもらうように求めていいのです。
性暴力の被害者の心理状態に十分配慮し、被害者が取り調べによって再び傷つけられること(セカンド・レイプ)がないようにすることは本来なら警察が自発的に対策を講じるべきものです。しかし警察や検察(起訴するはどうか決定する)の対応は、「自分は被害者なんだから警察にいけば助けてもらえる。裁判で加害者を裁いてもらえる」という被害者の当然の期待を裏切るものである場合が多いのです。現在の日本の性暴力をめぐる法システム自体が被害者の人権回復の観点からつくられていないからです。多くの人が指摘する告訴期間の短さ(刑事6カ月、民事3年)はそれを象徴するものなのです。
でも、嘆くことばかりじゃない。厳しい現実のなかでもたくさんの女性が、自分自身で回復の方法を探り、選択し、行動する力をもっている。それをあらためて感じたシンポジウムでした。 |
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